. 行政書士組織論: 部分最適は罠

2016/07/09

部分最適は罠

気がつけば前回の更新から2ヶ月以上放置してしまっておりました。すいません、以後気をつけます。だが本人らに放置の意識はなく、ただ純粋に本業が多用でブログなんぞをちょいちょい弄っている暇もなく、本業以外にも我々は適度に遊び適度に休んでいるため、つまり汗して働いて飯食って遊んで寝る、という極めて人間的で健全な日常を送っており、ブログを更新するという作業がプライオリティの上位に上がってくることが殆どないのだ。

今日は図書館で借りてきている未読の本が尽きたという理由により更新させていただきます。

要旨を先に書きますので、ご面倒であればここだけ読んでいただくだけで全体の7割を概観していただけます。事務所経営において部分最適は巧妙な罠であり、精巧な部分を積み上げても全体は完成せず、それによって出来上がるのはグロテスクな木偶坊のみだ、というものです。そして恐らく、士業のブレークスルー要因は大なり小なりここに集約されていくのだろう、というものです。


家内制手工業と大差ない事業規模感を何十年も繰り返してきた士業という業界は、この10年ほどの間に様々な規制緩和や法改正(どちらかといえば自由主義的な)により、様変わりしてきているようです。以下のような記事は、その様変わりの風景に関係しています。

行政書士組織論: 適正規模について
行政書士組織論: 行政書士業界の小ささ

掻い摘んでいえば、(ほぼ)個人零細事業者しかいなかった業界が、おっかなびっくり組織化、大型化していく時代の過渡期、と言えるでしょう。弁護士業界にはいわゆる四大の例が先行しているので、僕は今後の羅針盤としてその辺りが参考になると思っていますがね、ここでは他の士業は置いておいて、行政書士業界のことだけを検討します。

個人零細の行政書士事務所が少しずつ大型化していく過程では、様々なものが「部分最適」されていくはずです。業界自体が大型化を経験したことがないので、全体最適のノウハウがどこにもないのです(というか、そもそも大型化が成功するのかって話ですけど笑)。噛み砕くと、「俺はこういうやり方がやり易いからこうしよう」「とりあえず今回はこうしておこう」が無数に積み上げられていって、結果的に社内の誰も全体を理解できていない状況です。

また、士業になる人(なりたい人)の特性だと思うのですが、みんな職人になりたがるんですね。不思議ですよねー、俺には全く理解できん。そして職人(の意味を勘違いしているだけだと思いますが)だからと言って、独自のやり方をすること自体に快感を覚えている節もあります。いや、そんなもん覚えんなよ許可要件覚えろよって思いますけど笑。

個人の独自ルール、又は個人でなくとも汎用性のないルールは、どれほど合理的に見えても、合理性を主張しても、全体にとって最適化されていなければ単なる部分です。そして部分をいくら磨いて積み重ねていっても、全体の統制は取れませんし、却って部分に引っ張られて全体の動きを鈍らせます。

恐らくどなたも身に覚えがあるとあると思いますが、地域の大きめの先輩事務所とか、社歴長いところとかで、「なんでそんなもちゃもちゃしてんのかなー、お客さん一杯いるのに勿体無い」というところをイメージできると思います。恐らくそれでも、全員がそれなりに良かれといって日常業務なり、業務改善なりをしてきた結果なのだと思いますが、部分最適の罠なのだろうと塩谷は思います。

このもちゃもちゃをブレークスルーすることは、そのまま個人零細をブレークスルーすることに繋がると僕は思います。そこを超えた極めて少数の行政書士事務所だけが、今我々が見ているおっきいところ(大先輩系のところ)だということでしょう。日本にもちょっとだけありますよね。

つまり、一番最初に決めてしまうべき事項は「事業規模○○円の○○型事務所」という種類のものであって、そのビジョンからブレイクダウンしていく順番で事務所内の諸制度、諸設備、ワークスタイル、人員配置などは半ば自動的に導き出されるのではないの、ということです。少なくとも、「私はこうした方がやり易いんで」というやり方で決定される種類のものではない。

○○円を想定して作られている仕組みなので、その規模感を超えてくると制度疲労を起こすのです。そこまで行ったらぶっ壊して、次の規模感に合わせて再構築すれば良いのではないかと。

一番上に上場企業を抱えたグループ会社各社の連動や物事の進まなさを見ていると非常に勉強になります。どこかの子会社が独自に物事を進めないのは、横並び主義などでは全く無く、全体最適を優先してバランスしているのだということです。

ということでまた2ヶ月後までには。次の次の更新くらいには、今弊社で進んでいる面白い話をお披露目できるのではないかと思いますが、これがまたそこだけ切り取って進む話でないので、ジリジリなんですわ。

7/12追記
稿を分けて追記しましたので。
行政書士組織論: キスは罠 / 部分最適は罠2