ともすればいわゆる「イケイケ系」と思われがちな我々(年齢的に)中堅層の行政書士ですが、実は一定以上の結果を出しているのは殆どが保守本流的でオーソドックスな、イケイケでもない事務所さんの方が多数であり、月並みだが突出するよりも安定した事務所運営を行うほうが、中長期的には経済合理的だと思うよ、という趣旨の稿を上げたいと思います。
--(以下余談)
30代後半から40代前半くらいの我々行政書士の一部がイケイケなんでしょ、と思われている理由は、恐らく彼らの開業時期と士業におけるウェブの時代が合致していたからですよね。10年前まで、あらゆる行政書士のサイトで皆が皆ガッツポーズしていましたし。んで、ウェブというものの性質上、イケイケっぽく振る舞うことが合理的に働く場合が(当時は、としますが)多かったのだろうと思います。
その当時、若手の行政書士がガッツポーズをしているサイトと言えば「起業支援」や「会社設立」などが王道でしたが、この市場はすべて後から来た会計マーケットが持っていき、価格が限りなくゼロになる(というか現時点ではマイナス会計さえありえる)という実にウェブらしい経過を辿りました。ガッツポーズをするのは、行政書士でなく税理士にチェンジしました。
同じ時間軸の中で、司法書士は過払い金請求というマーケットを完全に食い尽くし、ウェブによって法務サービスの地域的制約を事実上ゼロにするという作業をしました。我々はこのウェブの特性2つを間近に見ていたことになりますが、とても貴重だったと思いますよ。そして行政書士は、その特性にハマる業務をまだ発見できていないっすよね。
--(余談終了)
なお先に塩谷個人のスタンスを付記しますが、素の塩谷は根本的に混乱愛好家(カオスラヴァー)ですが、事務所運営においては猜疑的と言っていいほど保守的で神経質であり、マメで漸進主義的です。更に言えば敢えてそういうポジションに自分を追い込んでいるので、仕事をしているときに「ああ楽しいなー」とか「好きなことやってるなー俺」なんて感じることなど一瞬もなく、朝から晩までずーっと憂鬱ですが、そうして今の事務所を運営すること(国内主要都市圏で安定継続的に軽度から重度の企業法務に関する手続きを大量に処理し続けること)が社会に有用であると考えているので、仕方がないです。これしかできねえし。
さて、二項対立をはっきりさせた方が趣旨が明確になるので、乱暴に「イケイケ」と「保守」に分けてみます。実際にはもっとこの区別は曖昧で多義的です。
10年で1回のスパンとしましょう。塩谷が開業10年ちょっとだからですが、10年前からこの業界の盛衰を見ている人とは、「ああ、いたねそんな人」談義を何時間でも続けられると思います。いたんですよ、イケイケっぼい人たちがたくさん。そして綺麗さっぱりいなくなっています。いなくなって何をしているのか知りませんが、少なくとも業界内でバリバリやっているという話は聞かないので、何か違う道に進んだのでしょう。それはそれ、行政書士は単に職業の1つなので、何も悪いことはないです。
イケイケっぽい人は、その時そのタイミングに突出した成果を見せることがあり、1つの能力だと思いますが、飽きっぽいのか腰が軽いのか、そういった傾向があり、継続性がないことが多いようです(傾向として、という話ですので)。また、男の子なら分かると思いますが(女の子でも分かると思うけど)、そういうのって目立つし格好良く見えるじゃないですか。未経験者が颯爽と業界に現れ古い習慣を無視して短期間に大きな成果を上げる、的な。んでスパッと次の世界へ行く、みたいな。
もしかしたら自分がそうじゃないからやっかみで言ってるのかも知れませんが、いや違うんですけど、別に格好良かねえと思うんですけどね。まず、格好良いかどうかでこの商売をしていないので、そのことは評価基準に含まれないと思いますけど(格好良いと仕事がたくさん来るんだったら話は別だが、我々はタレントでもアーティストでもなく特定分野の専門技術者だから、総合的な技術力が高いことが格好良いし、そのことで仕事がたくさん来ると思いますけど)。
一方で、同じく10年前から、手堅くジリジリと業績を積み重ねている人もいます。突出した成果を誇張するでもなく、淡々と実績を積んで事業を継続しているタイプの人たちですが、10年もキャリアを積めば日々依頼者との間に生まれるトラフィックは膨大なものになり、業務にも通暁するので、爆発的に拡大することはないとしても、ジリジリと規模を拡大していくようです(僕の親しい知り合いはみんなそうです)。
それくらいのキャリアがあると、日常的に発生する事項には大体対応できますし、先も読みやすいので、色々安定します。んで、この事務所運営の安定性こそ経済合理性の肝だと塩谷は考えています。簡単に言えば、安定してる方が儲かりまんのや。単年でガガーっと1億円の利益を出すより、利益1000万円を20年続けるほうが儲かるし現実的だし、地域の事業者さんに貢献できる範囲も広いでしょう。
そもそも行政書士の業界で、短期的に荒稼ぎして逃げ切ることが合理的に働くようなヤマなんて皆無なので、コツコツ実績を積んで安定した事務所運営を長期的に続けること以上に理に適った方法論なんてないんですよね。いえ、イケイケで突出した結果を燃え尽きずに何年も続けられるなら大いに結構なんですが、この10年見聞きした範囲には1人もいないよね、という感じでございます。
どこで読んだのか失念しましたが、我々のクライアントである企業は、突出した天才より安定した凡人を好むということかと。大枠の一般論として100%同意しますね、誰が言ったか忘れてしまったのが残念です。
このブログでは何度も同じことを書いてますが、儲かったらそれを懐に入れてウハウハしたい、ということを我々は考えていません。次の事業に再投資することで、この成果を社会に還元してゆくのだと思っています。ウハウハしたいなら士業じゃないビジネスした方が手取り早いですよ。
また、士業の事業規模などは一般の営利企業に比べたら悲しいほど小さいので、還元すべき成果とは金銭的なものではなく、特定分野の専門技術だと思いますし、専門技術に付随する流麗なオペレーション技術だとも思います(4万人の雇用確保とかできれば良いんですけどね、不可能なので。だったら4万人雇用を生む業界に専門技術を提供することで貢献することしかできないですね)。技術は共有したいと思います。
長々書きましたが、コツコツやるしかないよね、ということで。なお、成長には時に無茶しなければならない機会がままあり、安定とは真逆の作業がたまに発生しますが、必要な時にはこれはこれで甘んじて受け入れる必要があるかなと。AIにおける社内の相対としてこの無茶担当は長江さんですし、俺から罵詈雑言を浴びることになりますが、それはそれで役回りなので、仕方のないことです。