どうも、塩谷です。6月が終わり今年も折り返しですね。月並みな話で、もう今年も半分終わっちゃったかー、歳取るごとに時間の流れが...なんてことを言いたくなるのですが、ふと振り返って「果たしてこのまま許認可屋のおっさんとして職業人生を終えるのかしら」などと思うこともあり、ではその職業人生をどう感じるのかと言えば、僕は独立してからこっち、まるでお伽噺のような士業の美しいストーリーの中に現在進行形でおりますので、まあそれはそれでいいんじゃねえの、としか言いようがないですね。
そんな安穏とした6月の終わり、平和ではあるがさすがに月末なので忙殺されているというある日の昼下がり、マイメン長江ちゃんから「freeeでこんなサービス始めるらしいで!」というコメントと共に以下のリンクがチャットにより送られてまいりました。
› freee がクラウド初の「給与・人事・労務」一気通貫対応 HRTechのデータプラットフォームを目指す | freee プレスリリース
AIの代表者は俺じゃなくあくまで長江ちゃんなので、俺はこの会社の責任は全て彼に押し付ける気満々ですが、さすが代表は月末締めでがっちゃがちゃになってる現場を超越している、業界リサーチを怠らない。だがマイメン、この記事1年前のだぜ。始めるらしいんじゃなくて、もう始まって1年経ってんのや。
でもいいんです、業界の趨勢なんて1〜3年スパンでなんとなく把握してれば。MFクラウドの人事サービス取り扱いも2年前の話だしね。
› 『MFクラウド給与』、煩雑な社会保険料計算・事務手続きをクラウドでサポート | エヌ・ジェイ出版販売
さて冗談はさておき、弊社でこれらを使うかと言えば、絶対に使いません。毎月お金払って(イケてる)社労士に顧問してもらってる方がはるかに経済合理性があることなんて分かり切ってるし、合理性を越え、合目的性も満たしてくれるので、選択の余地さえありません。俺は人事系の手続きをウェブで簡単に済ませたいんじゃないんだ、会社を安定継続的に発展させたいだけなんだ。その為の経費なんていくらでも惜しまん。
自社で導入はしないのだが、こういうニュースを見て、じゃあ自分の事業にどのように関係するのか、ということは考える必要があります。大まかな見立てをすると、入退社の手続きや日々の経理、又は時間の経過で機械的に動くものは、プログラムを組むことで管理把握できるようになっているので、士業はこれらを処理する仕事を失います。手続き業務と呼ばれるようなものです。もう少し詳しく言えば、これらの中で士業が独占的に処理していいことになっている事柄(士業の好きな独占業務というやつ)は、士業は処理だけさせてもらって、果実という名の利益は他の事業者が得るようになります。
入り口が既に変わってしまっているのです。AIの取扱業務の中でも結構なウェイトを占める入札参加登録申請というものがありますが、AIで元請&施工になるものがまだまだ割合としては多いものの、「ああ川上抑えられちゃったな」と感じています。川上に鎮座しているのは税理士でも弁護士でも司法書士でも、もちろんモグリのチンピラでもなく、上場企業のサービス会社です。士業ですらないんです。
これは入札参加に限ったことでなく、前田くんも某グルメ情報系媒体から仕事もらってると言ってましたし(前田くんが誰かは説明しない)、税理士が大好きな理美容業界を根幹からガッチリ握っているのは熱い辛子みたいな名前のサービスです。熱い辛子が理美容業者から根掘り葉掘りニーズを聞き出し、お金の相談が出てきたら税理士を外注下請として使う、という世界がもう出来上がっているんです(んでマージンな、みたいな)。
freeeやMFクラウドみたいなサービスは、お金の流れを扱うので事業化しやすく、またフィンテックと言われる分野も拡大している最中ですので、一般事業者が参入しやすい中小企業法務の分野だったんでしょう。出資してるのも金融機関だしさ。これを入り口にして、一般のサービス事業者はどんどん中小企業法務という分野を食っていくと思います。さっきの熱い辛子の会社さんは理美容業者の予約管理サービスから入っていって、経営周りまでサポートし始めているようですね。んで、面展開や営業力、提案力、いわゆるマーケティング力、なにより資金力などは、士業なんてこれらの業者に敵いっこないんでございます。
更に言えばこれら一般事業者にとって、士業に出しちゃう業務というのは、事業モデルの根本じゃありません。どちらかと言えばカスタマーのフォローアップに近いところなので、そこから利益を上げる必要が全然ないんで、利益は自社のメイン事業で得られれば全然オッケー、なんです。結果としてどうなるか、業務単価が下がるんですね。
別に僕は読んでくださる方の不安を煽っているつもりはなく、煽って護摩符でも売りつけようという気もなく、セミナー開いて会費10万円いただこうというつもりも毛頭ありませんが、現在首都圏を中心に起こっている事業環境の変化を客観的に俯瞰して先の見立てをすると、論理的に考えてそうなるやろ、ということです。士業目線で強気に見積もっても、入り口が士業プロパーから一般事業者に移っていっており、この流れは更に進む、というのはまず間違いなさそうです。
どうしましょう、一般の事業者が参入できないような高難易度の業務を高単価で扱いましょうか。または思いっきり属人性を上げてコンプライアンスコンサルティング業務に特化しましょうか。僕はどっちも嫌です。どうなるかは分からんが、以下のようになるだろうと僕は思っています。
› 行政書士組織論: 士業法人を買うのは誰か
自分も資格業で身を立てているので、その立場から対策をするとすれば、まず自分を相対化せよ、ということかと思っています。相対化、客観視とも言えると思いますが、そのようなことを次の稿ではまとめてみたいなと。例によって次がいつのことになるのか不明ですけれども。