. 行政書士組織論: 構造と力3 / 800のテーゼ

2017/11/14

構造と力3 / 800のテーゼ

お疲れ様です、塩谷です。最近何故か、以下の古い記事へのアクセスが急増しているようです。原因は分かりません。

行政書士組織論: 組織の前提となる売上について(番外編 / 塩谷編)
行政書士組織論: 組織の前提となる売上について(番外編 / 長江編)

いわゆる「売上1000万円目指そうぜ!」的な記事ですが、このブログの想定読者の方々にはこの方法論はもう不要なはずなので、個人的にはさして重視していません。まあそれくらいの数字を前提にしないと組織論の端緒にも着かないよね、という前提条件のお話です。

僕の所属する法人の決算が来まして、会計事務所からほぼ確定の数字が届いたので、しげしげと見つめてこの数日を過ごしました。もちろん会計事務所さんをディスる気持ちは毛頭ありませんが、いくら見つめても出てくる感想は「うん、知ってた」しかないのです。強いて言えば年初の予測より5%上にぶれた(&納税額が増した泣)ことくらいかなと。5%はぶれ過ぎかもしれません、でも今期の分を先喰いしているだけなので、3年スパンで見れば誤差です。

5%だとぶれ過ぎと思える程度には、自社の事業構造のことを把握できているということなので、おおよそ想定通りに物事が進んでいると言えると思います。更に言えば、前の12ヶ月決算と比較して売上は113%伸びており、この113%は更にその前の12ヶ月での伸び率とぴったり一緒なんですね。

行政書士組織論: 構造と力2(或いは11期目終了の振り返りについて)

「普通に12ヶ月営業すると前年比113%伸びること」が構造に織り込まれていると言ってよいのではないか。というかそういうつもりでこの会社をやっているのだが。113は劇的な数字ではないが、複利で113%の投資信託があったら誰でも買うだろ、ということです。どなたかうちの未公開持ち分買いません?老後資金の一部にもってこいですよ。

さて、おふざけはこのくらいにして今回の主題を先に書いてしまいます。行政書士事務所を組織運営する上での数字の設定として、800万円/1人/年間という数字を業界に提案したい、というものです。

我々の業界で、巷間には行政書士として独立開業するなら1000万円も夢じゃないですよ、こうすれば1000万円行きますよ、という言説が溢れ、この数字がある種業界のスタンダードというか、目指すべき数字と認識されていると言っていいでしょう。検索してみると山ほど出てきます(ほとんどがコンサル笑)。

行政書士 1000万円 - Google 検索

今回の記事の冒頭にある、塩谷と長江ちゃんが書いた1000万円記事にアクセスが増えているのも、試験時期なんかが関係あるんだと思いますが、まあ1000の話はこのくらいにしましょう、1つのロールモデルということで宜しいか。

この数字の可否とか是非、正しいか正しくないかなどは論じる意味を感じないので、そういうものだということにしておきますが、事業体としての継続性を考えると、1000/1人なんて辞めといた方がいい、できるだけ速やかに、と思います。理由はいくつもありますが、ここではすっ飛ばしましょう。

1000/1人なんて普通の人でも十分可能ですが、業界的には目指すべき成功モデルになっているようです。業界に入るなら誰もがスーパーマンで熱意溢れ、実務に長けてマーケッティングも勉強し、セミナーで東京行って、商工会や青年会議所、ライオンズ、ロータリークラブにも皆勤して、保険屋とも毎週飲みに行って(もちろんFacebookもインスタもいいね!しまくるぜ!)みたいな世界が大っ嫌いなんですね。もっと普通でいいんじゃねえの、と。

普通の人々が集い普通に行政書士事務所を運営し、9時出勤18時退社(休憩1時間)残業なしの週5日勤務40時間、月160時間、盆暮れ正月含めた年休120日の240日出勤という稼働をすると、当然1人事務所では不可能なので複数スタッフのチーム制になりますが、1人あたりの年売りは800万円くらいに落ち着くのだな、という(現段階での)結論に達しました。んでこの稿を書いています。1人には、所長クラスや従業員である資格者、パートさん、間接業務の事務スタッフなど全てを含みます。

(何度も書いていますが、塩谷が想定している行政書士とは許認可を中心とした商事法務全般を主要業務としているので、相続などの民事系、コンサルやセミナー、出版などのタレント系を前提にしていません)

800/人で計算してみると、所長+従業員行政書士+パート2名=4名なので単純な掛け算をすると年間売上3200ですが、パートさんは100%稼働しないので少し減算を入れ、丁度3000くらいになります。すっごい無難で妥当な数字になります。

また、以下のような計算もできますね。年間に800万円売り上げる従業員である行政書士さんがいたとしましょう。大体みんな「もっと給料ください、今期売上3000ですよね、売上上がってますよね」などと言うようになります。800万円を月160時間の12ヶ月計算してみると、1時間あたりの売上は4166円、賃金に回せるのはどんなに比率を上げても50%なので、時間給になおすと2083円、月給になおすと33.3万円になるので、所長などで売上そのものに責任を負う立場でない場合、従業員としての給料は平均33万円で頭打ち、ということになるのです。おっかないですね...。

7人だったら5500くらい、10人だったら8000くらい、12人で1億くらいですね。もう妥当すぎて言葉がありません。付言すれば、士業の利益率は10%が適正値なので、12人いたら利益だけで業界の売上目標と同じ数字です。つまりだから、普通の人は組織を作るか、組織に所属するのが合理的な生き方になるのです、この業界の未来。合理性は問題じゃない、俺は自分の事務所を持ちたくて仕方ないんや、やらせてくれ、というなら止めません、頑張ってや、としか言いようがない。

残業をする、スーパーマンがスーパーマンとして活躍する、業務単価が異常に高額なもののみ受ける、脱法行為をして不当に高額の報酬を請求する、横領する、脱税する、処理能力の限界を越えて受注する(そして事故る)など様々な方法で、800/人以上の数字を出すことは全然可能です。いくらでも何でもできます。ただ、安定継続的に事業を行い継続して売上を上げて利益を出し、事業者に成果を還元し、更に次の事業を展開していくには、無理せず普通にやっていくに越したことはないし、スーパーマンばかりで会社なんてできないので、少なくともうちの会社では113%ずつ伸びていくように、800/人くらいを想定して運営していこうと考えています。

もっと書くべきことがあると思いますが、大体書くべき趣旨は終えましたし、書き始めてから飲んだワインが完全に効いてきているので、この稿はここで一旦締めて次に続きたいと思います。