. 行政書士組織論: ブラックとタンデムについて

2019/04/16

ブラックとタンデムについて

塩谷です、前回から7ヶ月空いた更新になります。少なくとも年に数回は更新しておかないとドメイン代を支払っている意味がありませんし、読んでくださる方も極めて稀にいらっしゃるので、今年最初の稿を公開しておきたいと思います(ちなみに2017年の更新は8件、2018年は4件のようです。控えめに言って、ネット上の活動として最悪ですね)。

はじめに何の意味があるのか分かりませんが、ここ数ヶ月の読了本のうち印象に残ったものを列記します。書籍代数千円程度の元を取れることは1000%保証します。

ホモ・デウス 上: テクノロジーとサピエンスの未来
ホモ・デウス 下: テクノロジーとサピエンスの未来
神は、脳がつくった 200万年の人類史と脳科学で解読する神と宗教の起源
会計の世界史 イタリア、イギリス、アメリカ――500年の物語
タコの心身問題――頭足類から考える意識の起源
人生100年時代の年金戦略
なぜ世界は存在しないのか (講談社選書メチエ)
野生の思考
› 構造・神話・労働 【新装版】―クロード・レヴィ=ストロース日本講演集
確率思考の戦略論 USJでも実証された数学マーケティングの力


続いて、このブログの趣旨に関係するようなトピックをいくつか。前回記事に関すること、各地のご同業とお話させていただいていることです。

行政書士組織論: 起業と経営と戦前と戦後

まず前回更新時の記事について、世界中のほぼ全ての方には関係ありませんが、極めて少数の方から詮索のような、押しなべて遠慮がちな配慮と共に様子を聞かれるので付記します。

僕と長江ちゃんが喧嘩したとか、袂を分かったとか、そういうことでは全くなく、我々はそもそもツー&カーなので、その点は現在でも特に変わりありません。ただ単に、共同経営していた事業体を共同経営以前の状態に戻したというだけです(共同時代の活動によって当然そのまま丸きり元の状態で切ったわけではないのだが)。

株をやっている人なら分かるかもしれないが、いわば長江ちゃんは利確をしたのだ。僕は利確するタイミングじゃないと感じているから、しなかった。利確は相場だけ見てするものじゃない、殆ど人生観に近いものだと思う。

この経験を基に最も一般化できるコメントを1つだけすれば、共同経営のようなことをするなら、お互いにお互いがいなくても決して食いっぱぐれる心配のない相手を選ぶことだ、ということですね。離れたら食いっぱぐれるような相手だと、離れる決断をできなくなってしまうのだな。その決断が長引くほどに、どんどん悲惨な状況に向かっていくことは間違いないと思う。

我々にとって最も幸福だったのは、出会う前から現在、未来に至るまで、お互いが「最近どう?なにちょっとしんどいの?だははー大変だねー」が洒落で済む相手だということです。だから、この距離も一過性のものである可能性が高い。

次に、年末に広島で行われた全国行政書士法人会の研修会についてです。

› 開催のご報告|研修&情報交換会2018年12月19日 - 全国行政書士法人会

今回のテーマなどはリンク先などご覧いただくとして、面子が(我々の業界では、とするが)豪華で楽しいです。一定の成果を出された方が集まっていて、今では事務所経営が主な仕事になっているものの、そもそも全員が全員まずプレーヤーとしてのキャリアを積んでいるその道の人たちなので、奇妙だが安心感があるのな、言葉が通じる相手というか。

このことにも1つだけコメントすると、1人でできることには限りがあるから、人と協力しないとクリアできない壁というのはあるわな、ということかと。他人と一緒に仕事することで、それは雇用関係でも外注関係でももちろん良いが、巨視的にいえば、我々の業界そのものを1つの専門職の集団と捉え、時代の要請に合うかたちにアジャストしてゆくことかと。

僕はこの法人会が、その端緒の1つになればいいと期待していますが、そこまで議論が熟すまでには相応の時間が必要だとも思っています。僕はこのように、全体主義的で漸進主義的な考え方を(事業では)するのだが、周りの士業とうまくいかない原因かも知れない。

各事務所の経営陣がランダムな判断を繰り返すうち、そこに集約してゆくのではないかと思っています、個人的な願望を込めつつ。

次に、暮れに行われた小島くんのセミナー海外版のことです。

行政書士組織論: チキンレースと偏執狂について

大分時間が経っているのであまり覚えていませんが、僕は1万時間のことをお話したと思います。クラシック音楽の世界などで言われる話で、後年天才と呼ばれる演奏家は、若年時の極めて短期間に1万時間以上のレッスンをクリアしているという実証実験です。

これは比較的汎用性のある話で、行政書士事業も1万時間をクリアすればそれなりのかたちになるのではないかとお話しました。極めて短期間とすると、1日16時間労働を約2年間続ければクリアできることになり、じゃあ1日16時間仕事すれば良いのでは、と極めてブラックな理論立てをしたと思います。

僕個人の意見としては、ブラックだが間違えていないと思っています。そもそもスタートアップ時はあらゆるリソースが限りなくゼロに近い状態で、それを無理無理1にして、3をかける作業をしようというのですから、16時間くらい働いたってどうってことないでしょう。だから僕は新人くんに独立時のノウハウのようなものを聞かれたらまず何時間仕事しているか尋ね、16時間に満たない場合はそれをやってからまた聞いてくれと答えています、生存者バイアスというやつですね。

ここまでの16時間の話はこのあとに続く話のフックです。20代の非常に将来有望な後輩くんと話していた議論では、以下のことを話し合いました。

16時間働かせていいのは自分だけ、ということです。このブログの本旨は、行政書士事務所を組織的に運営することの理論と実践なので、組織内にいる人間には何時間働かせるべきかも合わせて検討すべきですが、当然1日8時間だと僕は思っています。だってそれがルールなのだから。

全国のヤバい同業者さんたちとお話しているといつも感じますが、お会いする方の中で僕はおそらくトップクラスに保守的な経営観です。組織を維持管理して反復継続的に一定の利益を出していくのが正道と考えており、また僕は基本的に正道しかチョイスしないので、保守的で漸進主義的な、つまり堅実でゆっくりした事務所経営しかしません(その間にはずっと細かい業務改善を繰り返しますが)。

既出の後輩くんには、あなたのように16時間働いて、なおやりたいことに時間が使えないと思えるのは、あなただけだと言っておきました。パートナーにもスタッフにも、もちろん外注さんにもそれは望むべくもないし、基本的に(あなた以外は)整地された道を整備された日本車で法定速度を守って運行したいと思っていて、荒野をハーレータンデムで闇雲にぶっ飛ばして楽しいやつなんていないんだよ(あなた以外には)、とあらゆる角度から完璧なおっさん1000%発言をかましております。

上記のほか、外国人の就労と人材ビジネスについて勉強していること、弊社仙台オフィスが移転してめっちゃ綺麗になっていること、書籍を書かせていただいていること、今期の入札業務も相変わらず大爆発していたことなど、そこから導かれる組織運営に関する要諦などありますが、次の機会(半年後)にしたいと思います。